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「こいつぁまいったな、とりあえず俺はパスで」
「…俺もパスだ」
予想外の強敵の出現に翔と剣悟は面をくらい、対応する順番の擦り付けあいを始めてしまった。
その様子に見かねた杏里が前に出ようとするが、相手方の嫌らしそうな視線に気づいたのと、美菜達からのアイコンタクトにひとまず引き下がる。
「やっぱり、私が出たほうがいいのかな……」
「杏里ちゃん、危ないって」
「そうだぞ、こういう相手にはあたし達は手を出したらもっと危険な目にあうのが関の山なんだから」
「刑事ドラマの見すぎだ!」
事態の対処を巡って杏里達があたふたしているとき、翔達は機械的な相談の結果、どっちがやり合うかじゃんけんで決めていた。
ところが、あいこが続くせいでそれがなかなか決まらないでいる。
「こうなったら、こいつで最後の勝負だ」
「…いいだろう、最初は……」
ついに勝負が決まりそうになったとき、二人の間を割り込むように相手の拳が空を切った。
「いつまで待たせるつもりだ」
「うるせぇ、もう少しで決まるんだ。もうちょい待ちやがれ」
「…これで決まる、待っていろ」
「もう待てんぞ、二人まとめて片付ける」
その言葉とともに、相手の拳が再び二人に向かって飛んでくる。
最初のターゲットにされたのは翔だった。
「翔ーーーっ!」
「つっ!」
翔が避けられないことを悟り、防御体勢をとると同時にぶつかる音がした。
思わず目をつぶっていた美菜が目を開けると、茶髪に金メッシュを入れた男が敵の頬に肘鉄をくらわせていた。
「おい、俺の大事な後輩に何の用だ?」
「な、鳴海……先輩……」
それは、たびたび翔や甲兵が名前を挙げていた鳴海章太郎その人だった。
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