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「少々手こずりそうだけど、何とかなるか」
「いつから見てたンすか。いつもそうですよね、いいとこで現れて手柄にする」
突然現れた鳴海に、翔は幾ばくかの感動圧し殺しながらも話をつなぐ。
「それはお前もそうだろ」
「ま、そうですけどね」
鳴海という思わぬ援軍の登場に相手のヤンキー連中は騒がしくなってきていた。
そもそも、鳴海は以前から腕っぷしの強さは翔や甲兵はもちろん、都内で彼を知る間では有名であった。
「さて、早いとこ片すか」
一気に攻勢に転じた翔達は、ヤンキー連中に近づいて行く。
それと同時に相手は後退りを始めていた。
これからという場面に入りかけたとき、ヤンキーが一人、また一人と外に出ていった。
「やらないのか…?」
「これ以上は付き合いたくない、覚えてろ!」
その捨て台詞と共に体育館は翔達だけになった。
それを見て、改めて翔は鳴海に向き合った。
「先輩、なんで今さら……」
「それはお前らがわかってるんだろ。部長に頭まで下げられて戻って来たけど、こういう事態になってるとはな」
「…そうだ、翔の従弟が入るまでは助っ人を頼まないと試合もできない」
「なら、その心配は無用だな」
「まさか……」
「お前らが気に入った、戻ってやるよ」
鳴海のその発言に翔の表情が変わっていく。
同時に、無意識に翔の口元も笑顔を帯びていた。
「最っ高、の展開だぜ……!」
「…ああ」
その展開を見守っていた杏里達も思わず空気にのまれてしまっていた。
それでも、いい気分を感じていたのは間違いなかった。
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