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3月初旬の休日、優しさを増した朝日が少女の身体を照らしていた。
それに包まれ、寝息をたてている少女――来生杏里は日差しの温もりを存分に感じながら、眠り続けていた。
そんな春眠は突然流れてきた音楽によってあっさりと中断されてしまった。
「もう、いくら目覚ましの代わりだからって……」
すっかり安眠を妨害されてしまった杏里は軽く可愛らしいあくびをすると、五分かけてゆっくりとベッドから這い出し、隣の部屋に繋がる扉を開けた。
そこには、プラモデルや漫画等が収められた本棚やトレーニング器具に囲まれた部屋の光景が広がっていた。
杏里はその光景に目もくれず、扉と反対側でヘッドホンをしたまま寝ているサラサラな茶髪セミショートの少年――緋村翔に向かって声をあげた。
「ちょっと翔、いくらなんでも朝から音が大きすぎるわよ!」
「……Zzz」
「もう、止める側の気持ちにもなってよ…」
杏里はそうボヤきながら、未だ音楽を奏で続けているオーディオの電源を落とし、自分の部屋に引っ込んでいった。
杏里が乱暴に扉を閉めると、その振動が伝わったのか、オーディオのそばに飾ってあったモデルガンが倒れ、それが翔の額に直撃した。
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