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「痛えぇーーーっ!?」
この結果の予測がついていたのか杏里はその叫びを無視して階下の洗面所に向かう。
さっきまで流れていた音楽のせいでもう寝床という天国に戻ることを諦めた彼女は朝の行事をほとんど済ませたところで鏡を見る。
見方次第では蒼くも見える長い銀髪、それをポニーテールに纏めている途中の美少女が自分に何か言いたそうな表情をしている。そんな気がするのはいつものことである。
キッチンへ移動し、トースターに食パンを入れ、その間にパンにはさむ具を適当に見つけて席に戻ると同時に焼いていた食パンが元気よくはね上がった。
「いただきまぁ…」
「悪い、そのパン貰い!」
「あっ、ちょっと!?」
こんがり焼き上がったトーストに杏里が手を出そうとした瞬間、別の手がそれをさらっていった。
驚いた杏里が顔をあげると、翔がさっき自分が焼いたトーストを大急ぎで食べていた。
そして、翔はそれを食べきらないうちに玄関に駆け出していった。
「ヤバいヤバい、このままじゃいつものに乗れないぜ」
「私の朝ごはん……」
結局、杏里は表まで追いかけたものの、スケボーで去って行く翔の後ろ姿を見送ることしかできなかった。
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