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それから五分後…
「吹っ掛けてきた割りに見かけ倒しだったな」
「……な、なんで強えんだよ、港高なのに」
「見た目で判断したことが間違いだったんですよ」
「そういうこと、次から気を付けな」
「…逃げようとした奴が言うな」
「こりゃ失敬」
突然の乱闘は終わっていた。
あっさりと片付けられたヤンキーの山の横に翔達は立っていた。
誰もが多少の痣をつくったものの、勝負自体はほとんど翔達側が優勢だった。
「次はこうはいかないからな、覚えてろ!」
「はいはい、お約束お約束」
「それにしても、翔は変わった戦い方するんだな」
「そうですよね、大抵三発目で相手を仕留めてましたからね」
「ああ、あれ?俺に格闘技教えてくれた人がよくやるんだよ」
「へぇぇ……」
「ま、俺は時々リズム崩してカウンターも入れてくタイプなんだけどさ」
「うわー、俺には無理だな」
翔の話に甲兵が感心していると、剣悟が店員となにやら話をしている様子が見えたが、翔達には話が聞き取りづらく、内容が全くわからなかった。
店を出たあとしばらくして信宏が立ち止まった。
「このあとの自主練どうします?」
「なんだよ、この状況でてきるってのか?」
「冗談ですよ、さっきの乱闘で僕も疲れましたから」
「だろうな…」
「とりあえず、今日のところは解散ってことで」
「ああ、お疲れ」
その後は何事もなかったかのように翔達は新宿駅で解散していった。
「あ、お帰り」
リビングで昼の情報番組をBGMに雑誌を読んでいた杏里は足音で翔が帰って来たことに気づいた。
リビングに入って来た翔の顔を見た杏里は驚きのあまりソファーから転げ落ちそうになった。
「ど、どうしたのその顔!?」
「ああ、ちょいと乱闘やらかしただけだ、気にするな」
「気にするわよ、大丈夫なの?」
「正当防衛の範囲に手加減したからな、相手も見かけ倒しだったしさ」
「それならいいんだけど……」
心配ないと言われても、なぜか杏里は一抹の不安が拭えないでいた。
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