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翌日……
再び杏里の幸せな朝の眠りは突然の電話で見事に打ち砕かれた。
「ふぁい、来生……」
『杏里、今日空いてる?』
『いきなりすぎだろっ!』
『あいたっ!』
「梨乃?」
電話の相手は杏里の部活の友人――谷中梨乃と秋川美菜である。
「別に何もないけど、どうしたの?」
『今日うちの学校、合格発表じゃん。優ちゃんが受けてるから一緒に見に行こ』
「さっきの声からして美菜もいるでしょ」
『当たり、それじゃ後でテレポート駅で待ち合わせな』
「OK!じゃあね」
電話を切ると、杏里はすぐに出発の準備に取りかかった。
準備を終えて玄関にたどり着くと、翔が外出しようとしていた。
「あれ、翔どっか行くの?」
「学校に用があるんだよ、来生こそどっか行くのか?」
「奇遇ね、私も学校に用があるとこよ。優ちゃんの合格発表があるんだって」
「ああ、同感だ」
こうして、二人は一路港高校に向かって行った。
「あれ?杏里だけじゃないんだ」
「悪かったな、俺までいて」
二人が駅のエスカレーターを上がると、美菜と梨乃はそのすぐそばのバス停で待っていた。
「で、どういう用事なわけ?」
「そこまで言えっての?姉さんが急用で行けなくなったから俺が代わりに行けって言われた。それだけだ」
「全然わからないから」
「ほら、行くぞ二人とも」
「わかってるっての、秋川」
実は、翔と美菜と梨乃は小学校の頃からの幼馴染みであり、特に翔と梨乃は顔を合わせるたびに言い争いが起きやすいものの、別に中が悪い訳ではない。
そうこうしている間に翔達は港高校の校門の前に着いた。
それと同時に、翔は自分に任せられた用事を知ることになった。
「あ、皆揃ってどうかしたの?」
「そういうことかよ……」
「あ、隼人君じゃん」
そこにいたのは、翔達と歳が近そうな童顔の少年――高中隼人だった。ちなみに、彼は翔の従弟である。
「どうして新潟にいるお前がここにいるんだよ」
「あ、確かに」
「あのメンツを見たら俺もこっちでバスケやりたくなったんだ。それで、麗奈さんのとこから通うことにしたってわけ」
「それでよく伯父さんが許したなぁ……」
「それよりも、あたし達の用事もあるんだから」
「はいはい」
こうして一行は校内へと入って行った。
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