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彼女を迎えに、病院の廊下を歩く。
この病院にも、何度足を運んだことだろう。
整形外科の病棟は、もう知り尽くしていた。
『家族の方の待機場所なんだ』
谷口が居たICU集中治療室。
仲間が、何度も運ばれた。
そして俺自身も。
ここで一つの事を、諦めたんだ……。
長い廊下を行けば、数人とはすれ違う。
命に関わる病状の者は殆ど居ないだろうが、目に見える痛々しさが視界に入る。
いずれ復帰できそうな者、一生、不自由を余儀なくされる者。
俺もかつては、この長い廊下を絶望を背負って眺めていた。
運ばれて、身に起きた現実を知り、そこから始まる。
孤独との闘い。
俺はその頃の自分を病棟のあちこちで見つけながら、谷口の居る部屋の前にたどり着いた。
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