地獄編

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ある日、僕はアケミにお茶しないかと誘われた。 お断りしたら、何だかとってもヤバそうなので、死を覚悟してお茶した。いや、もう死んでるんだけどね。 「あっ、来夫くん、こんにちは♪今日はちょっとおめかししてきたんだ~、分かる?」 おめかしどころじゃなかった。彼女は全身にハエがついていた。 きっとあれだ、体が腐ってきたんだろう。 しかし、そんなこと、口が裂けても言えなかった。 「…うん…綺麗だね…」 僕は防御体制に入った。 「えへへ~、ありがとう♥実は… 僕は彼女の言葉よりもハエのブーンブーンが気になってしょうがなかった。だから彼女の会話を相づちでしか返さなかった。 「あのね、この前… ああ、帰りたい。それまでハエの数でも数えてみるか。1、2… 「でね、それで… 15、16…あっ、眠くなってきた… 「じゃあ、明日の午後一時に、ジゴキュウハイランドで待ち合わせね♪」 …コクリ… …やってしまった!何寝ぼけてデートの約束してんだよ!?しかも何そのジゴキュウハイランドって?あれか、富士急ハイランドの地獄版か?断れない、もう断れない… 「…明日は忘れらんない1日になりそうだね…♥」 …全くその通りだ。違う意味で。 「じゃあ、明日はもっとおめかしして来るからー!」 全身ハエ以上って何なんだとか考えながら、彼女が走っていくのを見つめていた。 この出来事以来、僕はハエを二度と数えはしなかった。
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