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暗い思考ばかりが脳裏を過り、少しずつ心中に溜まっていく。
もし、もしも父さんに見捨てられたら……俺は……
一人になると思うだけで、足元からずぶずぶと沈み込んでいくような焦燥感を覚える。
嫌だ。一人は、嫌だ……っ!
焦燥感は、瞬時に恐怖へと変わっていく。考え出したら怖くてたまらなくなり、挙げ句の果てには身体も震え出す始末。
こんな弱い自分が、
「大嫌いだ」
声に出し、その情けなく震えた声に更に自己嫌悪する。
「……はぁ」
溜め息を吐く。
悩みも、苦しみも、悲しみも、恐怖も。全て、全て要らない。
そんな嫌な感情ばかりで形成されている俺も……要らないのだ。
そこで思考を止め、立ち上がる。立ち上がる際に地面に手を付き、掌に小石が食い込んで痛かったが、まぁ気にするほどではない。
立ち上がった俺は、天藍を仰ぎ、夏の爽やかな風に身を包まれる。
あぁ。この風が俺の全てを浚って、流してくれればいいのにな……
漠然と空に願望を流しても、空はただただ綺麗なだけ。
風は掌に付着した砂を剥がすだけで、それ以外は何も起こらなかった。
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