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「次は鼻を削ぎ落とす。その後は目を抉る」
「ひぃ……ッ!?」
抑揚のない声で呟けば、目の前の人間共はドロリとした恐怖を瞳に浮かべた。
恐怖は、生への執心。執心は、欲。欲は、感情。感情は、意思力。
意思力は、《――――》の源。
力が俺を満たしていく。早く、終わらせよう。
俺は、再度腕を振った。
静まり返った室内で繰り返される、平坦な呼吸。
聴こえるのは己の呼吸と心音のみとなった部屋の中を、ぐるりと見回す。
室内を彩る鮮血。何かに区切られているかのように、不自然にその鮮血に染まっていない場所が存在している。
俺は、その場所―――――ベッド付近に近寄り、ゆっくりと片膝を着いた。
ベッドに横たわるレキにそっと触れ、一言。
「治れ」
次の瞬間、血にまみれていたレキは、普段―――――生きていた頃と何一つ変わりない姿になった。
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