正体と絶望

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「嫌だっ!だ、誰か……誰か、助けて!」 救いを求めて伸ばした手は虚しく宙を掻く。 嫌だ、怖い。傷付けるのが怖い。傷付けられるのが怖い。消えるのが、怖い。 震える身体を滅茶苦茶に動かして足掻く。 足掻いて、気付く。結局俺は、自分を犠牲に等という高尚なことを掲げても、本当の覚悟など出来ていなかったのだ。 「嫌だ……っ!」 怖い。自分がなくなることに対して、俺はこんなにも恐怖を感じている。 俺は、本当に愚かだ。 「誰か……父さん!皇紀ぃ……れ、レン!!助けて、くれ……っ!!」 この場にいないと、いるはずがないと分かりきっている名前を呼ぶ。 そこでついに、影が首から上へと侵食してきた。 「うぁ……っ!?」 情けない悲鳴が漏れる。誰か助けてくれ、誰か……っ! と、そこで一人の人物の顔が頭に浮かんだ。いつも俺の前にいて、俺を引っ張りながら共にいてくれた大事な主人公(親友)。 「さ、朔夜……!助け―――――」 その名を呼んだ瞬間。影が侵食の勢いを増した。 「―――――あ」 そして、俺の意識は闇に呑まれた。
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