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いけない、弱気になるな!
視線を逸らすわけにはいかないので、頭の中で強く叱咤し、弱気な自分を振り払う。
弱気になってはいけない、俺は勝たなくてはいけない!例えコンディションが最悪だろうが、朔夜の方が十五センチメートル以上身長が高かろうが、俺は……如月家の者だ。
如月家は、何より強さに拘る。俺の知らない如月家に何があるのかは分からないが、弱い者は見捨てられる。
俺は……
思考が良くない方へと進みかけた、次の瞬間。
「祐也、朔夜!組手を開始しろ!!」
大音量で、始まりが告げられた。
ビリビリと鼓膜を震わせるその声に、思考の海に漂わせていた意識を現実へと戻される。
しまった、結局策を考えていない……っ!
作戦が不充分なまま開始してしまった組手に、ひたすら焦りしか感じない。
くそ、どうすれば、どうすれば……っ!
思考が焦燥に塗り潰され、段々と疑問のみが頭を占めて行くようになる。
とにかく戦わなくては。
疑問に埋もれながらも、冷静な己が少しだけ顔を覗かす。
そして、俺は――――。
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