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自ら思い浮かべたその一言が、ずしりと重く胸に響く。
そう、負けたのだ。俺は……
不思議に、昼間のような恐怖や焦燥はない。ただ……悔しい。
同年代の少年に敗北したのが、全力を出し切ることなく勝負がついてしまったのが、目まぐるしく移ろい、混乱を来した今日一日に冷静な対処が出来なかった事が……父さんの期待に添うことが出来なかったのが、悔しい。
そして、俺の頬を、静かに水滴が伝った。
「……ふ、うぅ」
噛み殺しきれなかった嗚咽が、食い縛った歯の隙間から漏れる。
情けない、情けない情けない情けない!俺は、何故こんなにも情けない!?あの父さんの息子なのに、この如月家に生まれ、今まで辛く厳しい鍛練に励んできたというのに、なんて無様で情けないんだっ!!
爪が食い込み痛いほど拳を握り締め、ゆっくりと寝転んだままの身体を丸める。
まるで母親の胎内にいる赤子の様な体勢を取り、そのままキツく目を閉じた。
途端に、脳裏に浮かぶ組手後の光景。
勝負の顛末に喜び、笑う朔夜。
俯き目を伏せ目を伏せ、情けなく頭を垂れる俺。
そして、睨め付けるようにして俺を見下ろす父さん。
父さんに呆れられた、見離された、俺は……敗北した“ヨワイ”俺は、価値がなくなったに違いない……!
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