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目の前には、闇の中に映像を映し出すスクリーンのようなものが存在した。
そして、映し出されているのは、多くの人々が倒れている光景だった。
『……あ』
『ぐ……がぁ』
無数の呻き声が重なって聞こえてくる。
恐らく、どこかの国の軍隊なのだろうか。鮮やかな緑の丘に倒れ伏している人々は、黒を基調とした軍服を着ている者が多い。
「……な!?」
放心していると、酷い違和感が全身を包んだ。慌ててスクリーンへと視線を向ければ、《俺の身体が動いていた》。
『……あはは』
正確に言えば、俺の身体を乗っ取った何かが動いていた。
血濡れの手をだらりと下げ、呆然と立ち尽くしながらしどけない笑みを見せる狂人。
ここで、漸く合点がいく。
「お前か、ユウヤ……っ!!」
俺は、憎々しげに呟いた。
それが聞こえたのか、先程から聞こえる声の、そして俺の身体を占領している正体―――――ユウヤが、自嘲とも取れる笑い上げた。
『あははは……ごめんね』
最後には哀切すらを感じさせる声で謝罪したユウヤは、しかし、行動を止めずに近くにいた軍人の軍服を剥ぎ取った。
それを着込み、更にどこからともなく取り出したローブを上から羽織り、ユウヤは天を見上げた。
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