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魔王が事切れたのを確認した朔夜は、未だ突き刺さったままだった黒刀を引き抜き、血を払ってから鞘へと納めた。
「いやぁ、それにしてもあんなに上手く攻撃が当たるとは……」
皆が勝利の歓声を上げる中、流が、感心したように呟く。魔王を倒す切っ掛けとなった、あの変身途中に仕掛けた攻撃のことだろう。
あれは、勇者としてどうかと思ったが……綺麗事を言っている余裕はなかった。
あのまま戦っていたら、確実にこちらの敗けだった。そう断言出来てしまうほどに魔王は強大だった。故に、ああでもしない限り俺達は負けていただろう。
―――――例え卑怯だろうが、俺達は皇紀の仇を討ち、そして人類最大の敵を葬りたかった。
そして、それが完遂された今。
どうして、気分が晴れないのだろうか?
朔夜は、自分自身でもよく分からない苛立ちを振り払う為に、頭を軽く振った。
「さぁ、皆。帰ろうぜ」
そして、帰るべく笑顔で一歩踏み出した瞬間。
《ソレ》は起こった。
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