俺を取り巻いていた環境

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一頻り(朔夜だけが)笑っていると、 「祐也、朔夜!!私語は慎め!!」 驚くほどの至近距離から、鋭い喝が飛んできた。 「……っ!」 「うわぁ!?」 大音量に加え、その太く荒々しい声色に無意識に身体が跳ねる。 俺はまだ身体が跳ねる程度で済んだが、慣れていない朔夜は心底驚いたようで、情けない悲鳴まであげている。 し、しまった……。 声色からして怒っているであろう叫び主を想像して、思わず溜め息が漏れそうになった。勿論、道場でのんきに会話に興じていた数分前の自分に対して、だ。 これは叱られても仕方がないな……よし。 再度怒鳴られる覚悟を決めてから、素早く振り向き、頭を下げる。 「すみませんでした、師範!」 「朔夜はまだ日が浅いから仕方がないとしてもお前は違うだろう、祐也。罰として走り込み三時間だ」 「え、そんなにかよ!?」 俺への指事に対して驚きの声を上げる朔夜。 それもそうだろうな。師範の言う走り込みは、周数ではなく決められた時間内を、全力で走り続けるというものなのだ。 正直、三時間はかなりキツい。 「分かりました。走り込み、行ってきます」 ……しかし、いくらキツかろうがやらなくてはいけないのだ。俺は師範に再度頭を下げてから、道場から出るべく準備を整える。 俺の愛竹刀、マサムネを片付け使った場所の雑巾掛けをし、終わったら出入口で一礼。 礼の際に師範を盗み見れば、眉間に皺を寄せ、厳しい目付きで他の門下生の監視をしていた。 怒らせてしまいすみません……父さん。 何故だか重い足取りで外へと向かうと、外は気持ちのよい快晴だった。 暫時空を見上げ、小さく息を吸い込む。 ……さて、三時間キッチリ走らないとな。
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