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一通りの整理運動を終え、大きく一つ息を吐く。
そして、夏の乾いた熱い地面の上に座りながら、空を仰いだ。
広々と、どこまでも続いていくような天藍は清々しく澄みきっており、その眺めているだけで胸のすくような光景は疲弊しきった俺の心に安堵感をもたらした。
地面という床に座り、青天井を見上げたままでいると、不意にぼんやりとした思考が俺の頭の中を過る。
……俺は、このまま一生を過ごすのだろうか
如月家はとても裕福だ。古くから上質な反物を取り扱っているらしく、お得意様も多い。それに、父さん……現当主が指南している道場の門下生も決して少なくはない。
不意に、仰いだままの空へと手を伸ばしてみる。所々、青い絵の具が剥がれたように存在する雲にも、青い空にも、当然手は届かない。
……そんな裕福な家に生まれた事は、幸運に思うべきだろう。実際、思ってもいる……だが。
俺の小さな手は、空を掻いた。
だが、俺はこのまま『生きて』いていいのか?
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