俺を取り巻いていた環境

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別に強制されているわけではないが恐らく、時が経つにつれ自然な流れで如月家を継いで如月流の師範になり、次世代を教育する。 祖父から父に継がれたように、父から息子……俺に継がれる。 そんな、敷かれたレールをなぞるような未来が目に見えているのだ。 ここで、先程の疑問に戻る。決められた未来を過ごす事は、『生きる』と胸を張って言えるのだろうか? 俺には……分からない。勿論決められた未来の中にも思いもよらないことがあるだろう。だが、根本的には、俺はレールの上を走り続けることになるのだ。 勿論、変えようと思えばいくらでも変えようがあるだろう。だが…… そこでゆっくりと瞼を閉じ、吸い込まれそうな天藍から強制的に目を離す。 すると視界は一変し、限り無く黒に近いダークレッドが広がった。 視覚を絶ったせいで過敏になった感覚が、耳元をさわさわと擽る風を感じる。数秒風の爽快感に肖った後、思考を再開した。 ……俺には『如月家を継ぐ』こと以外に価値があるのだろうか。 最低限の関わりを持つ人からしか必要とされていない、むしろクラスメートやその親には一線引かれている俺に。 如月家を継がないとなれば、そんな俺に一体何が出来る? 怖い。誰からも必要とされなくなるのが……一人になるのが。 だから俺は、一人になるのが怖くてたまらないから『如月家に縛り付けられている』ふりをしているのだ。 本当に、狡く醜い。こんな俺は必要とされなくて当たり前だな。
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