眼球のかげ

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
 時おり、わたしの眼球にちらつく影のようなもの。  それはあくまでちらつくだけで近寄りもしないし、追いすがるわけでもない。  子供の頃はそれが怖いものように感じていた。  それはただ在るだけなのに。  それはただ在るだけで空気に似ていた。  だから、ないものだと勘違いしていた。  そして、別にそれがなくてもわたしは生きていける。  大切なものではない。  それよりも本当に大切なものと言い切れるものはある。  それでも、何か気になるのは何故かしら?  悲しくもなければ、嬉しくもないのに。  わたしの眼球にちらついていた影のようなもの。  いつからちらつかなくなったのか。  ないわけではなかった。  ただ在った。  その事実だけはわたしが言える確かなこと。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!