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「別に?色気があれば恋人の一人や二人……」
「いなくて悪かったわね!」
「痛ってぇ!」
玖裡が最後まで喋る前に頭を叩く。
姉弟は席が隣同士になるのが、この家の仕来たりで、他にも色々とある。家系図から言えば、ずーっとずーっと昔から続く由緒ある家系らしく、よく祖父から永遠と説明を受けることがあるが、半分以上は聴いていない。
その昔、この地には悪い狐がいたそうな。その狐を祠に封じて祀ったのが先祖の始まりだとかなんとか……。そんなことを祖父が亡くなってからはよく考えるようになっていた。
「くそ……弟なりに心配してやってるんじゃねーか!カワイソウナネーチャン」
「それはそれは……ドウモアリガトウ」
睨み合う二人。こんな憎まれ口の叩き合いはいつもの光景だが、去年まではそこにあった斜め前の祖父を思い出す。
「あんたたちねぇ……もうちょっと違う話しなさいよ…」
毎日ほぼ似たような会話を繰り広げる姉弟に母が言った言葉を祖父もよく口にしていた。
溜め息混じりに聞こえはするものの、苦笑いをしながらでは、説得力がまるでない。
「母さんだって思うだろ?」
箸で野菜を摘み口へと運びながら聞くも、食べながら喋るなと怒らる。よく野菜を噛みつぶして野菜が喉を通るのを確認してから、首を小さく横に振り、答えた。
「いや…そんなことないんじゃない?個性があっていいと思うわ」
「お母さん…それ、褒めてるの?」
微妙な会話に母はうふふと笑う。
その時…、
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