第一章『始まりの日』

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 テーブルのお皿にある残り一つのから揚げに二膳の箸が突き刺さる。 「……これ、私のなんだけど?」 「いや、俺の方が先に刺した」 「「お母さん、どっち?」」  二人は声を揃えて言った。 「凛」  母が一言呟くと、高々にから揚げを掲げ、 「よっしゃぁぁぁ!!私の勝利だ!どんまい弟君!」 「くそう!」  …から揚げ一つで大はしゃぎである。  食事の後はお風呂を済ませて時計を見れば、それなりに遅い時間になっていた。 「お母さんお休みなさい」  階段を上がり自室に入ってベッドにダイブする。 「眠い…。今日はもう寝よう」  そのまま、凛は夢の中へと落ちる。これから起こることなど、何も知らずに……。  これは、夢であって、夢ではない。現実の世界とリンクしているが、死にはしない。精神世界をただ永遠にさ迷い続ける。  夢へと落ちればそこには闇が広がっている。
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