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「ん…、あ~!よく寝……た…」
のそのそと起き上がり、伸びをして辺りを見渡す。
首が一周回るのではと思うほど、限界まで首を回す。目に映る光景は鬱蒼と生い茂る一面に広がる、長い草。
立ち上がり、周りを見渡しても、草。
建物らしき物は何もない。草も腰ほどの高さまであり、長年この土地が使われていないことを意味している。
「……は?」
そんな間抜けな声がでが。しばらく考え、弟は、母はどうなったのか気になり辺りを見回すが、人の気配などはまるでしない。本当に静かで、うるさい。恐らく夢でも見ているのだろうと思い、凛はもう一度寝るために横になった。
「あ、おい!見ろよ……あれ」
眠る寸前に聞こえた声。眠たい目を無理やり開けると、先ほどの原っぱではなく、一面が灰色の建物の中だった。
ついさっきまで草の上にいた凛は、次々と変わる景色に頭が混乱する。
「お前……どこの奴だ?どうやってここに入り込んだ?」
目つきの悪い男が、俯く凛の顔を覗き込む。
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