昔話

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ノアークス家はカイトがいなくなったことを世間に伏せているのか、ギルドには情報が入らなかった 執事のむかえを待つ俺はジンさんとその娘のリオナと過ごしていることが多かった (リオナはジンさんと違って青い髪と瞳だ。つまり俺と一緒の色) あの日から一ヶ月ほどたった頃、 ギルドにノアークス家の長男の葬儀が行われたことと、ノアークス家の筆頭執事が死んだという情報が入ってきた それを聞いた俺は頭が真っ白になってギルドを飛び出した 何も考えず、ただがむしゃらに走り続けて、気づくと森の中だった… どこともしれぬ森の中は混乱していた俺をさらに追い詰めた パキッ 何かを踏む音が聞こえて息をのむ そっと後ろを振り向くと2匹のウィンディ-ウルフがいた (ウィンディ-ウルフとは緑色の毛並みのオオカミで、移動スピードが風のように速いからウィンディ-ウルフと名付けられた) そのうちの1匹と目が合った瞬間、2匹のウィンディ-ウルフが襲い掛かってくる 『うわあぁぁぁあっ!!』 とっさに腕をクロスさせて身を守ろうとするが、意味はない なぜなら、魔法が使えないから こんなことで死ぬなんて考えたことがなかった… 一瞬にして死の淵に立たされた俺は"死にたくない"と強く思った しかし、いつまで経っても痛みはこない 恐る恐る目を開けるとウィンディ-ウルフが灰になっていくところだった それを見て呆然とする俺 「カイトッ!?」 そんな時、聞き覚えのある声に名前を呼ばれて振り返った 『ジ、ンさ…?』 ジンさんの姿を目にした俺の意識はここで途切れる 目を覚ますと、見慣れたギルドの天井が見えた
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