*+。それを頼りに。+*

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「……?」 あれ…?なんだっけ…。 まったく思い出せない……。 「蓮華、どうしたの?」 呆然としていると、心配そうな顔をしている椿が見えた。 「あ…、ううん。何でもないよ」 「本当に?本当に大丈夫なの?また頭痛くなったりしない?」 「大丈夫。全然痛くないよ」 椿が私の両手をギュッと握るから、やんわりと握り返して笑った。 「そう…。なんだ……ちっ」 「あれ、椿さん。今明らかに舌打ちしました?しましたよね?」 何か、怖いんですけど。 「…べっつにぃー。…また頭痛くなったら、思い出すかもしれないって思っただけよ」 「思い出す? 思い出すって何を?」 私が忘れてることって、あったかな? 何も思い出せない。何かを忘れてるのかな、私は。 私が頭を抱えて思い出そうと、クネクネもがいていると、椿が苛立ったのか、ムスッと頬を膨らませている。 「もういいわ! 蓮華なんて知らない!勝手にしちゃえばいいじゃない!」 椿はフンッと鼻を鳴らし、リビングから出て行ってしまった。 「………………」 「………………」 私と義貴先輩は無言のまま、椿が出て行った扉を見ていた。 ……とりあえず、謝っておこう。 「お騒がせして、すみません」 私がぺこりと頭を下げると、 「まぁ、俺はマンガ読めりゃいいから」 と言って何事も無かったかのように義貴先輩はひたすらマンガを読み始めた。 ……クールだ。 椿、彼のどこを好きになったんだい? 今一度教えて欲しいよ。  
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