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「椿、行っちゃいましたけど追いかけなくていいんですか?」
苦笑いしながら聞いてみると、義貴先輩は欠伸をしながら「そっとしておけばいいんじゃね?」と本のページを捲った。
「………うぅ」
誰かがこんな時追いかけてくれないと、私が追いかけたくなってしまう。
でも今追いかけると、また口喧嘩になっちゃいそうだし…。
「…お前だって、今追いかけても意味ないことくらい分かってんだろ」
「……はい」
小さく返事をすると、義貴先輩はにっこり笑った。
「どうにかなるだろ、きっと」
義貴先輩にそう言われると、何だかホッとする。
話が食い違ってることも…きっと…解決するよね。
「そうですね!」
私も笑って言い返すと、手に持っていた携帯が軽やかにリズムを刻んだ。
「…携帯、鳴ってんな」
「あ、はい」
義貴先輩がうるさそうに私の携帯を睨むから、急いで携帯のボタンを押した。
メールだ。
しかも…
「侑弥くんからだ…っ!!」
メールが来た瞬間、携帯が七色に光ってるような感覚に襲われる。
「…彰弥、じゃなくて?」
「義貴先輩!見て下さい!侑弥くんからです!侑弥くんからお食事のお誘いです!!」
嬉しくて義貴先輩にぐいぐいと携帯を押しつけた。
「ちょ、分かったって!落ち着け!」
「わー!嬉しいなぁ!どうしよう!!服、買わないとっ!
じゃ、義貴先輩!ゆっくり寛いでいって下さいね。ではっ」
早く早く、買い物行って服買って、侑弥くんとのお食事の日までにはマシな格好しないと!
リビングのドアを勢い良く閉め、自分の部屋に向かった。
リビングの中、
「…彰弥じゃなくて、侑弥…?
どうなってんだ?」
義貴先輩が首を傾げていた。
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