*+。それを頼りに。+*

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電灯に翳すと、キラキラと小さな輝きを放った。 「…綺麗だなぁ」 誰から貰ったか分からないけど、きっと…私にとって大切な物だったはず。 プレゼントの包装紙は、すぐにゴミ箱に捨てる私が、袋ごととって置いてるんだもん。 「…よし、ネックレスはこれにしたっ」 ふふっ、と笑って。 全身鏡の前に立ち、首にネックレスを飾った。 自分には勿体無いくらいのネックレス。 鏡の中の私は、笑っていた。 だけど、 「あれ…―」 目からポロリと涙が零れる。 「なんで…?」 ポロポロと涙は流れ出し、私の意志とは関係なく頬を濡らす。 鏡の中の私も、泣いてる。 「なんで…勝手に…?」 止めたいのに、止まらない。 微かに胸の奥が、ズキンズキンと痛み出す。 涙を急いで拭い、ネックレスを取った。 ネックレスを取ったら、涙は自然とおさまり、鏡の中の私は呆然と突っ立っている。 ネックレスを見た。 相変わらず綺麗に光を放っている。 「……これのせいなの?」 分からないけど、ネックレスをつけた瞬間、胸の中が苦しくて仕方なかった。 そしたら勝手に涙が出てきて…止まらなかった。 「……私にとって、大切な物だったんだよね」 誰から貰ったのかな…? とっても大切にしている宝物に、間違いはないはず。 「…………?」 思い出そうと、自分の記憶を探っても…まったく記憶に残っていない。 キラキラとしたネックレス。 まっすぐに見ても、何も思い出せない。 泣くほどの宝物だったはずなんだ。 それなのに……私の頭には、このネックレスが何故宝物だったのか分からない。  
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