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更衣室で、由衣にお化粧をしてもらって10分。
化粧品の匂いがして、自分が徐々に変わっていくことが分かる。
「よし!できた!可愛くなったよー」
由衣がにっこり笑って私を見るから、それが照れくさくて下を向いた。
「ありがとう。
…鏡…鏡はどこって…!!ああああぁ!!」
鏡を見ようとしたら、腕時計が目に入り、私はつい大きな声を上げてしまった。
「んもぅ、なにその男らしい声ー。もうちょっと可愛らしく叫べないの?」
「ご、ごめん!
私、行かないと!約束の時間遅れちゃう!」
由衣の指摘を軽くスルーし、「可愛くしてくれて、ありがとう!楽しんでくるね!」と由衣に言葉を投げかけ、更衣室を出た。
会社の中を颯爽と走り、バス停に着いた。
必死に走っただけあり、バスはまだ来てないみたいで、数分経った頃に丁度来た。
あー、助かった。
約束の場所までバスで行かないと間に合わないんだよね。
タクシーで行ったら、夕食代が無くなっちゃうし。
バスの後ろの奥の方に行き、空いてる席に腰を下ろした。
「よっこいしょ」
しまった、口からつい癖で出てしまった…!
「婆くせぇ」
後ろから、そんな言葉が聞こえ、ちょっとムカッとしたから顔だけ拝んでやろうと思い、振り向いた。
そこには……
「お前みたいな婆くせぇ奴、他にもいたんだな。奇跡に近いよ」
「…地球は広いですからね。世の中、侮れませんね」
「威張りながら言ってるから言うけど、バカにしてるからな」
望月さんんん!!!
と、見知らぬ子…!
一番後ろの席で少し距離を空けながら座っている2人。
私のこと、婆くさいって言ったくせに、振り向いても目も向けてくれない!
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