*+。感情プレパレード。+*

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バスから降りたら、走って約束のお店まで駆ける。 時計を見ると、約束の時間、19時から10分くらい過ぎていた。 もうお店に着く。 「わわ…っ!」 って思ったのに、またこのパターンですか。 足が出っ張っていたコンクリートに躓き、正面から倒れそうになった。 今度は顔からだよ…!これは、ちょっとマズいかも…! 身体が傾いた瞬間、グイッと後ろから腕を引っ張られた。 そのおかげで、私は顔から地面に突っ込まなくて済んだ。 あぁ、助かった。 通りすがりの人、ありがとう。社会もなかなか捨てたもんじゃないね。 「すみません、ありがとうございます」 安堵の息を吐きお礼を言うと、「バカ」と言われた。 な…! なんて失礼な…! ただ転びそうになった人間に、バカなんて言う冷たい他人がいるの!? 「な…っ!あれ…」 後ろを振り向くと、他人ではなかった。 呆れたような顔をしている侑弥くんがいた。 「…侑弥くん」 私がそう呟くと、侑弥くんは私の腕から手を離す。 バランスを取り、体制を立て直して、また侑弥くんを見た。 「…お前、何回転んだら気が済むんだよ。これでまた食いに行くの延期になったらタダじゃおかねぇ」 「ご、ごめん! 待たせてると思って、急いじゃって」 それに、早く侑弥くんに会いたかった…。 なんて顔から火が出そうになるから言えないけど……。 「俺は何十分、待ってもいい。だから、焦って怪我なんかするなよ」 普段短気な侑弥くんから、そんな言葉が…。 「…あ、ありがとう」 「んじゃ、行くぞ。俺、およそ20分待ったから、その分なんか奢れよなー」 「えぇ!? さっきと言ってること違うよ」 「俺は待たされるのが大嫌いなんだよ。今日は暑いし、アイスでいいかな」 「…まあ、アイスくらいならいいけど…」 ときめきを返して欲しい。  
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