*+。感情プレパレード。+*

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「じゃあ、椿はもう大学行くから。 蓮華は仕事頑張るのよー」 そう言って、椿は玄関の方に歩いて行ってしまった。 「……………」 私に何か出来たらいいのに…。 もさもさとパンを頬張り、朝ご飯を済ませ、私も身支度をして家を出た。 「行ってきまーす」 「行ってらっしゃい」 お母さんの声が聞こえ、私はバタンと玄関のドアを閉めた。 「さて、行きますか」 毎日毎日、この繰り返し。 何か変わったことがあれば、このつまらない世界も変わるんだろうなぁ。 たとえば、彼氏が出来るとか…。 …って、私には無縁かぁ。 侑弥くんに振り向いてもらえるわけもないし…。 家を出て、近場のバス停でバスを待ち、バスに乗る。 バス待つのも、ほぼ毎日。 …乗る人たちも同じメンツだしなぁ。 バスの中で友達とか出来たら楽しいんだろうけど…私の年齢に合う人がいない。 学生は話しかけるの怖いし…。 お年寄りは、話が長引いちゃいそうだし…。 そんなことを考えながら、バスを見回すと……見たことある顔が目に入った。 あ、あれ……。 バスが停止した時、席を立ち、その人に近付く。 「…ま、前川さん?」 肩を叩いて、遠慮がちに声をかけてみた。 前川さんは可愛らしく驚いた素振りを見せ、こちらを向く。 「…あ、二階堂さん」 可愛い前川さんの顔が、少し歪んだ気がした。  
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