*+。感情プレパレード。+*

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「前、座ってもいいかな?」 私がそう聞くと、前川さんは少し驚いた。 けど、すぐに「どうぞ」と言ってもらい、前に座った。 「何か用なの?」 「えっ!いや、特に用は無いんだけど…」 前川さんがサラリと言い放つから、ちょっと慌ててしまう。 用はないけど、私の中では前川さんと知り合い程度の関係になった気でいたから話しかけた。 「そう…。 先日はごめんなさいね。お見舞いに来たつもりなのに、おかしなことになっちゃって…」 前川さんは力無く笑った。 「そんなこと、別に気にしてないよ。ただ……この前居酒屋で話してくれた話が、あの2人のことなんだよね?」 率直に私が聞き過ぎたせいか、彼女は肩を震わせた。 「……そうよ。 まさか、二階堂さんと友達だとは思わなかった…。 二階堂さんは、騙されてない?大丈夫なの?」 騙す…? あの2人が、私を…? 「2人はそんなことしないよ。優しくて、良い人たちだよ」 私がそう言うと、前川さんは目つきを変えて、キッと睨んできた。 「嘘よ。あの2人は、あたしの気持ちを踏みにじった…。 好きなだけだったのに」 前川さんの瞳が徐々に潤んでくる。 可愛らしい瞳が、徐々に形を変えていく。 前川さん……。 可哀相だとは思うけど…。 「なら、前川さんは彰弥くんのどこが好きだったの?」 ちゃんと彰弥くん自身を見て、好きになったの?  
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