*+。会いたい。+*

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「わ、分かった! おやすみなさい!」 プツッと電話が切れる音が聞こえ、私はケータイをカバンの中に入れた。 「詳細とか言ってたよ!!なんか、大人みたい!」 私、“詳細”とか使ったことない! 侑弥くん、今は大学生だったよね。大学で“詳細”っていう言葉を覚えてきたんかね。 私が家の玄関前で“詳細”という言葉に感動していると、「じゃあ、またね」という言葉と車のドアをバタンと閉める音が聞こえた。 「…私も言ってみたい」 きっと車のドアを閉めたのは、若い女の子で只今大恋愛中とか書いてある看板を背中にぶら下げて歩いて、楽しく人生を生きてるんだろうな。 自分の家の前に立ち、目を閉じて考えていると、後ろから「なにやってるの?」という言葉が聞こえ、目を開いた。 目を開くと、横から椿が顔を覗き込んでいた。 「わわ…っ!椿…!」 綺麗な透き通った肌に、長い睫毛。 栗色に染めた髪は、綺麗なパーマがかかっている。 彼女とすれ違っただけで、桃の香りが鼻を掠める。 私の双子の姉、椿。 只今、大学生! 今日も…眩しいぜ! 「やめてよ、その男子みたいな反応ー。見飽きちゃったわー」 羨ましいぜ! 私も言ってみたいぜ! 「あはは、ごめん。だって知らない間に後ろに居たんだもん」 「義貴くんとデートしてたの。車で送ってもらって、そこでバイバイしたのよ」 な、なぬ…! 只今大恋愛中の看板をぶら下げてたのは、椿だったのか…! 「そうだったんだ」 あーあ、何もかもが羨ましい。 「蓮華はボーっと突っ立って何やってたの?」 「ちょっと…夜風にあたってました」 彰弥くんから連絡が来ず、落ち込んでて、侑弥くんからの連絡で怒られ、詳細という単語に感動してたなんて、言えない。 椿に無駄な心配をかけちゃいけないからね!  
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