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顔を上げると、関谷さん。
「気持ちは言葉に出さないと、伝わらないんですよ」
彼女はにっこり笑った。
関谷さん………。
彼女の柔らかな笑みと、その言葉に……私は負の世界に進み始めていた自分を引き戻させた。
さっきまで暗かった視界が、まだクリアに見える。
「…うん」
そうだ。
伝わらないと、何も意味がない。
私が心の中で怯えていたって、それが彰弥くんに伝わるはずがないんだ。
言葉で……伝えないと。
すぅ…と息を吸い込み、携帯のボタンを押した。
彰弥くんの番号を打ち込み、耳元に携帯を寄せると、プルルル…と定期的な音が聞こえる。
ああ、良かった…。
繋がってる。
関谷さんと望月さんが心配そうに見つめてくれてる中、彰弥くんが電話に出るのを待った。
知らない番号だから、出てくれないのかな?
この待ってる時間が、既に緊張する。
お願い、彰弥くん。
出て………――
『はい』
携帯のスピーカーから聞こえる声は、間違いなく…私が今求めている人の声だった。
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