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「……そ、それって……」
言葉がはっきり出てこない。
私の頭の中も、喉のところまで出掛かっている名前も…前川さんなのに。
『それに、蓮華に来て頂くなんて…何か悪いですし。
俺から会いに行きますよ』
なんで…?
私だって、早く彰弥くんに会いたいんだよ?
会って、彰弥くんの顔見て…安心したい。
本当は、一番先に会いたいって言いたい。
会って、自信を持ちたい……。
前川さんに先に会って欲しくない。
前川さんに、負けたくない。
でも、そんなこと言ったら…ただの自分勝手な人間になってしまう。
前川さんを散々応援するような口振りだったのに、急に【会わないで】なんて……相当だ。
「…そっか、分かった。じゃあ彰弥くんが会いに来てくれるの待ってるね」
私のワガママなんて、通しちゃダメだ。
それに通らなかった時、私は一番ショックを受けるだろう。
私よりも、前川さんに会うのを優先するんだって……受け入れたくないことを受け入れないといけなくなる。
だったら、自分の気持ちを黙って……彰弥くんを信じるしかない。
彰弥くんは大丈夫だよね。
『良かった…。大切な約束をしていたんです』
心の底から、彰弥くんの嬉しそうな声が聞こえる。
その声を聞いて、胸がざわついた。
大丈夫…だよね…―、彰弥くん。
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