*+。おかえり!。+*

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「ただいまっ!」 急いで家に帰ってきて、2階への階段を駆け上がった。 「おかえりー」と下からお母さんの声が聞こえる。 部屋へと一心に走って、自分の部屋の扉を開けた。 中を開けると、何も変わっていない私の部屋。 私は真っ先に棚に置いてある水色の箱に手を伸ばした。 唇の端がつり上がる。 どこまでやってたかな…?あまり進んでいなかった気がするけど。 パカッとフタを開けると…―。 「あれ…?」 箱の中は空っぽだった。 「おかしいな」 首を傾げ、箱をひっくり返してみたり、床を見渡した。 何もない。 この間、掃除はしたけど……捨ててないよね。 あれは、捨ててないよね。 不安になってゴミ箱をみたけど、やっぱりココにない。 あれ…―? まさか、私…。 フと、頭の隅で蘇るのは、侑弥くんとご飯を食べに行くのを嬉々としている私。 そうだ、あの時レシートの塊が邪魔で……邪魔で……。 『なにこれ?幼稚園の頃の…?』 折り紙の鶴、見つけて…いらないビニール袋に入れて…― 「捨てちゃったんだ」 水色の箱をベッドの上に放り投げ、自分の部屋を出た。 要らない、と言って捨てた。 彰弥くんへの気持ちを込めた鶴を…。 部屋の前にビニール袋を置いたはずなのに、それはもう既に無くて…―。 今頃、それに気が付くのも馬鹿な話で…―。  
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