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「蓮華ー、ただいまぁ」
間延びした椿の声が部屋の前で聞こえ、「おかえりー」と急ぎめに言った。
「…何かしてるの?」
ドアの向こうから椿の疑問そうな声が聞こえたけど、そんなこと返事してる余裕がない。
いつ彰弥くんが帰ってくるかは、まだ分からないけど…出来れば早く出来た方がいい。
「入るわよー?」
私が返事をしなかったのが悪かったのか、椿は私の返事無しにドアを開けた。
私は椿の方を見ることなく、せっせっと折り紙を折った。
「…蓮華、何やってるの?」
「折り紙折ってるの」
ただ折るだけじゃダメだ。
気持ちを込めて丁寧に折らないと。
「折り紙?
なに?何かのシュクダサ…」
「シュクダサってなに?宿題ダサいの略!?」
椿は“宿題”と言いたかったみたいだけど、噛んでしまった模様。
笑って突っ込むと、椿は「むぅ…、ちょっと噛んじゃっただけじゃない」と頬を膨らませていた。
可愛いなぁ、相変わらず。
「あはは。
宿題なんてないよ。だって私もう働いてるしさ。
ちょっと……やりたいと思ってたから、やってるんだ」
5羽目の鶴を折りながら言うと、椿は「鶴しか折ってないの?」と聞いてきた。
「そうだよ。何かの雑誌で読んで折ってたんだけど…ちょっと数羽鶴無くしちゃって…」
情けない。
というより、バカすぎる。
「無くした鶴の分取り返すために、ちょっと急いで折ってるんだ」
話してる間にも、自分に往復ビンタしてあげたい気分だ。
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