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そう思うと、ホロリと涙が出そうになって、グイッと目を擦った。
「よし」
やっと会える。
クッキーを入れた紙袋をギュッと左手で握りしめ、顔の綻びと一緒に引き締めた。
空港の中に入ると、ざわざわと色々な人が行き交い、すぐここから逃げたくなる。
人混みは嫌いだ。
具合が悪くなりそう。
とりあえず人通りが少ないところを歩き、フとあるカフェの前で足を止めた。
『madeleine』
…美味しそうな匂い。
ふんわりと甘い匂いがそのカフェから漂い、すぐさまそこで時間を潰すことに決めた。
中に入ると、観葉植物がところどころにあり、温かみのある店内だ。
「いらっしゃいませ、お一人様ですか?」
しかも可愛らしい店員さんが出迎えてくれる。
素晴らしいですね、これは。
店員さんにテーブルまで誘導されながら、柔らかい店内に頬が緩みきっていると、見覚えのある後ろ姿が目に入った。
「…あれ」
あれって……。
似てる人かな…?
見覚えがある人は、女性と向かい合って座っている。
女性は遠目から見てるから、顔は分からないけど雰囲気は優しそうだ。
目を凝らして見ようとすると…ついにその見覚えがある人の横顔が見えた。
それは…私が一番会いたくて会いたくて仕方なかった人で……まだ12時半くらいの時間帯だったら、ここにいるはずがない人で………。
頭の中がボーっと固まっちゃって、私は持っていた紙袋を落としてしまった。
中に入っていた、可愛らしい形のクッキーが…割れた気がした。
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