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無性にその場に居たくなくなって、何だか…胸の奥がざわざわして…気分が悪くなった。
「……っ…」
クッキーを持ち直し、その場を去ろうとした瞬間、彼と向き合っていた女の人と目が合った。
ああ、あれは…知らない人なんかじゃない。
あの女性は、くるんとした愛らしい睫毛と、ぷっくりとしたたらこ唇が特徴で。
本当は可愛らしい性格…だけど、辛い過去があったから…内向的になった、前川さんだ。
前川さんがどんな表情をしているかなんて見てられない。
私を見た前川さんがハッとした顔をしたけど、私は知らないふりをしてカフェを出た。
前川さんは彰弥くんとやり直したい、と言っていた。
私は、躊躇していた彼女の背中を思いっきり後ろから押してしまった…―。
そんな私が、彼女に言えるわけがない。
ごめんね、私と彰弥くん付き合ってるの。
なんて、彼女がまた人を信じられなくなってしまう。
背中を押した時…なぜ私は彰弥くんと付き合ってると言わなかったのだろう。
言えたら少しは変わったはずなのに…―。
こんな申し訳ない気持ちが積もることも無かったのに…。
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