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私はカフェを飛び出した後、空港の中の人気が少ない陰に隠れていた。
近くには立ち入り禁止の扉があり、人が来る気配もいる気配もない。
ここで少し落ち着こう。
座って休む人の為に近くにベンチがあり、私は重い腰を落とした。
もし、彰弥くんが前川さんとやり直すと決めたら、その時は文句なんて言えない。
私が2人がやり直せるように手助けをしたんだ。
それなのに…文句なんて言ったら、それこそ私は最低最悪だと思う。
その時は、あっさり受け入れて温かく笑おう。
彰弥くんが、私に帰ってくる時間を遅く伝えたのも、彼女に会う為だろう。
彰弥くんのことだから、誠実に前川さんと向き合うって決めたんだ、きっと。
元々は、彰弥くんも前川さんもお互いを想い合っていた。
だったら、やり直すなんて…簡単じゃないか。
彰弥くんの気持ちが少しでも前川さんに揺れたら…―
「もう、私なんて…いらない…よ…」
堪えるように言葉を、ぽつりと零した。
ただ
『おかえり』
って、言いたかった。
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