*+。おかえり!。+*

26/30
前へ
/430ページ
次へ
前川さん、ありがとう。 しみじみと心の中で呟き、彰弥くんに会うために急いでその場を離れた。 辺りを見渡しながら小走りで走っていると、お土産コーナーで彰弥くんが何かをジッと見ているのが見え、私は笑顔で近付いた。 「彰弥くん!」 「……!? お、驚きました…。 蓮華ですか」 後ろから私が話しかけたことに肩をビクッと彰弥くんは震わせた。 「ごめんね。そんなに驚くとは思わなくて」 「…いいえ、こちらこそすみません。前川さんとは、もうお話は終わりましたか?」 心配そうに聞いてくる彰弥くんに、笑顔で答える。 「うん!終わったよ!」 「そうですか。 何を話したんですか?」 彰弥くんは首を傾げ、私を見つめる。 うーん、あれは女の子同士の話だからなぁ。 なるべくなら、 「秘密だよ」 言わないでおこう。 「…蓮華が俺に隠し事とは、素晴らしい試みですね。 そんなこと言ってたら、これ差し上げませんよ?」 彰弥くんは、小さい何かを私の目の前にちらつかせる。 「あ!それ!クリスピタヌキのキーホルダーだ!」 私が目を輝かせると、彰弥くんは「話してくれますか?」と笑顔で聞いてきた。 …さっきの話だけは、あまり言いたくはない。 強いて言えるなら、 「…私と前川さんのただの談笑。私たち、友達だから」 これだけだ。 「…そうですか」 「うんっ!それだけ!」 「素直に教えてくれたので、約束通り…こちら差し上げますよ」 「わあ!ありがとう!」 クリスピタヌキのキーホルダーを渡され、笑みが零れる。 あ、そうだ。 彰弥くんに伝えたい言葉があったんだ。 「彰弥くん! おかえりっ!」  
/430ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2795人が本棚に入れています
本棚に追加