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前川さん、ありがとう。
しみじみと心の中で呟き、彰弥くんに会うために急いでその場を離れた。
辺りを見渡しながら小走りで走っていると、お土産コーナーで彰弥くんが何かをジッと見ているのが見え、私は笑顔で近付いた。
「彰弥くん!」
「……!?
お、驚きました…。
蓮華ですか」
後ろから私が話しかけたことに肩をビクッと彰弥くんは震わせた。
「ごめんね。そんなに驚くとは思わなくて」
「…いいえ、こちらこそすみません。前川さんとは、もうお話は終わりましたか?」
心配そうに聞いてくる彰弥くんに、笑顔で答える。
「うん!終わったよ!」
「そうですか。
何を話したんですか?」
彰弥くんは首を傾げ、私を見つめる。
うーん、あれは女の子同士の話だからなぁ。
なるべくなら、
「秘密だよ」
言わないでおこう。
「…蓮華が俺に隠し事とは、素晴らしい試みですね。
そんなこと言ってたら、これ差し上げませんよ?」
彰弥くんは、小さい何かを私の目の前にちらつかせる。
「あ!それ!クリスピタヌキのキーホルダーだ!」
私が目を輝かせると、彰弥くんは「話してくれますか?」と笑顔で聞いてきた。
…さっきの話だけは、あまり言いたくはない。
強いて言えるなら、
「…私と前川さんのただの談笑。私たち、友達だから」
これだけだ。
「…そうですか」
「うんっ!それだけ!」
「素直に教えてくれたので、約束通り…こちら差し上げますよ」
「わあ!ありがとう!」
クリスピタヌキのキーホルダーを渡され、笑みが零れる。
あ、そうだ。
彰弥くんに伝えたい言葉があったんだ。
「彰弥くん!
おかえりっ!」
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