*+。会いたい。+*

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――月日が経つのは早いもので、何だかんだで火曜日になってしまった。 「よっしゃー!今日は、やっちゃうわよー!」 仕事上がり、更衣室で由衣が念入りにお化粧をしている。 普段からツケ睫毛を着用している由衣だけど、今日は異常に長い睫毛だ。 「…本当に私も行くんだよね?」 最後の抵抗とばかりに、イヤな顔を由衣に向けて聞いた。 「当たり前!約束したでしょ?それに、蓮華に似合う男を探す為でもあるんだからね」 「…うん」 私より年下のはずなのに、お姉さんらしい言葉を吐く由衣に、小さく頷いた。 別に男の人はいらないんだけど…。 「なに?まだ引きずってるの?」 「引きずってるというか…まあ、うん」 「蓮華はさ、そんな彼女を放っておくような人より、ずっと構ってくれる人の方が合うんじゃない?」 由衣は、何故か当たり前のように、私の顔をパウダーでポンポンと叩いている。 「…でも、お互いのことは離れてる間は忘れようって約束したし…」 「しっ!動かないで。 でも、そんな約束したら、ますます距離が開くことくらい、蓮華も彼氏も分かってたんじゃないの?」 私に有無も言わさず、由衣は好き勝手に私の顔をいじってくる。 今は、私の睫毛にマスカラを塗りたくっている。 「分かってたのかな。 私は、分かんなかった。 確かに距離は離れてるけど、心の距離はもっと近付くのかと思ってた」 「……蓮華の気持ちと、彼氏の気持ちは…知らない間に遠ざかっているのかもね」 由衣がぽつりと言うから、私は否定しようと口を開いた。 「な…そんなわけ…っ」 「あ、もう時間だ! 急ごう蓮華!」 「うわっ、え、ちょっと」 由衣に言いかけた言葉を掻き消され、私達は走って更衣室を出た。  
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