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「……俺も、蓮華と会えて嬉しいですよ」
「う、嘘だ!」
彰弥くんの言葉を間髪いれずに否定した。
「嘘ではありません。蓮華が戻ってくれて良かった…」
「へ?戻る?
どこに?」
抱き締められながら話を続けられても、私の頭は全く機能しない。
機能しない上に、パンクしそうな勢いだ。
彰弥くんって、なんでこんなに良い匂いがするんだろう。
男の子なのに…全然嫌な匂いがしないし、逆に良い匂い…。
なんか、よく椿が噛むシトラスガムに匂いが似てる気が無きにしもあらず。
「…とりあえず、座りましょう」
彰弥くんが上手い具合に私を丸め込んで座らせようとしてくる。
くっ…そのまま良からぬ話をする気だ。
「い、嫌だ…!
私は座らないよ!
このまま立ってる!」
「お願いしますから、座って下さい。それとも、このままの体勢で話したいんですか?」
彰弥くんの言葉に顔が強張ってしまった。
このまま至近距離で話したら、間違いなく私は鼻血が出ると思う。
このまま改まって座って話し合うか。
まさか…やっと会えたのに、今後の2人の方向性について話されたらどうしよう。
「…どうしますか?」
彰弥くんの落ち着いた声に、私は目をギュッと瞑った。
「……す、座ります」
身体がもう熱くなってきて、汗ばんだ手をギュッと握って答えた。
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