*+。知らない感情。+*

26/39
前へ
/430ページ
次へ
「…ふふ、懐かしいです。小学生の頃の夏休みの工作で、千羽鶴を折ったことを思い出します」 「なんか負けた気持ちになるから、そういう癒され方はヤメてくれないかな…」 小学生の頃の彰弥くんは千羽鶴。社会人の私は百羽鶴。 ……何なんだろうか、この敗北感。 「…すみません。でも、とても嬉しいですよ」 百羽鶴を自分の目の前にかざし、彰弥くんは笑う。 その表情に私も癒されて、彰弥くんに自分が作ったクッキーを勧めた。 「これも食べて食べて!美味しそうでしょ!?」 ウサギの形やネコの形をしたクッキー。 彰弥くんの更に喜んだ顔が見たくて、私は調子に乗った。 「美味しそうですね。 では、いただきます」 彰弥くんがネコの形のクッキーを摘み、一口パクッと食べる。 私はその瞬間を浮き立つような気持ちで見つめた。 そう、私は調子に乗っていた。 「…………………う゛っ……」 彰弥くんは突如口を押さえ込み、前屈みの体勢になった。 「彰弥くん!?どうしたの?美味しくて驚きすぎたのかな?」 そう、私はこの時実に調子に乗っていた。 「…れ、蓮華……、クッキーに何を…入れたんですか?」 口元を隠し、涙目で私を見る彰弥くん。 私はパチパチと2回瞬きを繰り返し、何を入れたか思い出す。 「変なものは入れてないよ?えーと、隠し味にチョコレートと胡椒、七味を入れたくらいかな」 「明らかに2種類ほど、有り得ない材料が入ってたことに気付いてますか」 「?」 そう、私はこの時世界一調子に乗っていたのだ。  
/430ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2795人が本棚に入れています
本棚に追加