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「彰弥くん…」
ああ、涙が出そうだ…。
決してクッキーがクソまずいからじゃない。
私が、夜遅くまで作ったクッキー。
眠りそうになりながら、ひたすらお菓子の本を読んで作ったクソまずいクッキー。
その頑張って作ったクッキーを、彰弥くんは食べようとしてくれる。
その気持ちだけで、私の努力が報われた気がした。
「彰弥くん、いいよ。無理して食べなくても。
これは私が食べるから」
クソまずいクッキーを一口一口食べる姿に、私は本当に涙が出そうだった。
「いえ、ですが…これは…」
「彰弥くんには、また私が新しく作ってくるよ」
そう言って、彰弥くんからクソまずいクッキー入り袋を取ろうとしたが、なかなか渡してくれない。
取ろうとしたら、遠ざける。
「…彰弥くん、本当にその頑張って食べようっていう気持ちだけで作った甲斐があったから充分だよ」
「嫌です」
「えぇ!!?」
嫌ですって言われたって困るんだけど……。
「俺の予想では、恐らく蓮華は昨日夜中まで眠たい目を擦りながら、料理本を見て、このクッキーを作り、眠たすぎるあまり胡椒と七味を隠し味に入れようと感覚が麻痺した行動に出てしまったと思うんです」
「え!エスパー!?」
彰弥くんの言ったことは、すべて当たっていた。
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