2795人が本棚に入れています
本棚に追加
「な…！な…！なぁ…っ！！」
侑弥くんは何故か顔を真っ赤にして口をパクパクと何度か動かしている。
「…………」
彰弥くんは何も喋らないでニコニコしているけど、本当は笑っていない。
むしろ目が冷めているのが、私でも分かる。
「…大丈夫？なんか私、よくないことでも言った？」
「言ったに決まっているでしょう。なぜ侑弥なんかに可愛いと言っているんですか？」
彰弥くんは、いつもの表情を崩さずに、私に言った。
「可愛いと思ったから、可愛いって言っただけだよ」
「なに女たらしみたいな台詞を言ってるんですか。
本当は俺にも言いたいことがあるんじゃないですか？」
「いや、ないよ」
サラリと言い切ると、彰弥くんは通常の笑顔を固まらせた。
「？？？」
彰弥くん、どうしちゃったんだろうか…？
固まってしまった。
「残念だったな、彰弥。お前には可愛いところがねぇからだ」
侑弥くんはいつの間にか、さっきの真っ赤な顔はどこかへ行き、ニヤリと笑っている。
「煩わしいです。
別に可愛いと言われたって、俺は嬉しくなりませんね。
男ですから、可愛いなんて言われたら、ショックです」
「なに強がってんだよ。
最近は可愛い男子が流行ってるっていうのに」
「そんなひ弱な男性になりたくありませんから」
「ひ弱＝可愛いってわけじゃねぇだろ。
な、蓮華」
「ああ、うん…そうだね」
……なんか、兄弟喧嘩って…ちょっと面倒くさいね。
最初のコメントを投稿しよう！