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侑弥くんが心なしか寂しそうにこちらを見ていたのは気のせいだろう。
気のせいだと思いたい。
「さあ、侑弥も追い出したところですし、このクッキーを改めて頂きましょうか」
彰弥くんが手に握っているのは、私が作った手作り感満載のクソまずいクッキーの袋だった。
キラキラと光が見えるような笑顔を浮かべている彰弥くん。
「うん…」
そんな彰弥くんに返事はするものの、頭の中にはさっきの侑弥くんの様子が壊れたビデオテープみたいに延々と流れている。
き、気になる。
駄目だ。何も考えないようにすればするほど、さっきの侑弥くんが頭の中で繰り返し繰り返し寂しそうな表情をしているのが、異常に気になる。
目の前で彰弥くんはクソまずいクッキーを消化中だ。
こんなクソまずいクッキーを食べてくれるのは、彰弥くんしかいないだろう…。
けど、もしかして……。
私はソファからバッと立ち上がり、彰弥くんからクッキーの袋を取った。
油断していた彰弥くんから、呆気なくクッキーの袋が取れた。
「蓮華…?」
彰弥くんは、少し驚いたように私を見る。
「ごめんね、彰弥くん!
すぐ戻るから!」
彰弥くんからクソまずいクッキーを取り上げ、私は彰弥くんの部屋を飛び出した。
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