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「侑弥様なら…あちらに行きましたよ」
真由奈さん…元気がなさそうな気がする。
「ありがとうございます、真由奈さん。侑弥くんにこれを食べてもらおうと思って探してるんです」
真由奈さんにクソまずいクッキー入りの袋を見せた。
「クッキーですね。美味しそう」
やっぱり真由奈さんの表情は冴えないままだ。
元気がない。
私が侑弥くんを探してるから……とかじゃないよね…?
「真由奈さんも食べてみて下さい」
袋の口を真由奈さんに向けると、「え?宜しいんですか?」と少しだけ顔に笑みを取り戻した。
「どうぞどうぞ」
真由奈さんは袋からクッキーを取り出し、一口サクッと食べた。
「……!!!
……~~~っ…!」
涙目になりながらクッキーと私を交互に見る真由奈さんに、笑ってみせる。
「私が作ったクソまずいクッキーです。彰弥くんには食べてもらったんですけど、侑弥くんにはまだ食べてもらってなくて」
笑って言ってみせると、真由奈さんは苦々しい顔をして、喉にある異物を何とか飲み込もうと必死な表情。
そして、やっとゴクッと飲み込む音が聞こえ、真由奈さんは「…ふぅ」と息を吐いた。
…どんだけ不味かったんだろうか、私のクッキー。
でも、とりあえず真由奈さんの不安は拭えたみたいだ。
「本当に、これを侑弥様に?」
涙を拭いながら笑っているから、大丈夫。
「はい、彰弥くんだけクソまずいクッキー食べるのは申し訳ないので。行ってきます」
笑って、クッキーをまた見せると、真由奈さんは「行ってらっしゃい」と柔らかく笑った。
……泣くほどマズいのかな、私のクッキー。
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