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真由奈さんに教えてもらった方向に進むと、侑弥くんが歩いている姿が見えた。
「侑弥くん…!!」
侑弥くんの背中に言葉を投げかけると、大きく肩を揺らし、こちらを向いた。
「あ゛!?なんだよ!」
なぜ喧嘩腰なんだ。
侑弥くんがイライラした表情をしながら、私の方に近付いてくる。
「これ、クッキー作ったから、侑弥くんも一口食べて」
クッキーの袋の口を侑弥くんに向けると、侑弥くんは何とも言えない顔をして、「い、いらねー」と呟いた。
「食べて欲しいから追いかけてきたんだよ。ちょっとでいいから食べてよ」
「……」
そう言うと、侑弥くんは渋々クッキーに手を伸ばす。
そして、口の中に放り込んだ。
「どうかな?」
「……っ…~…!」
侑弥くんは何も発せず、口元を抑え、気分が悪そうな表情をする。
そんなにマズいんだ私のクッキーって。
侑弥くんの反応に少しヘコみながらも、「食べてくれて、ありがとう」とお礼を言って、元来たルートを戻ろうとした。
走り去ろうとした瞬間、
「ありがとな!」
という言葉が後ろから聞こえた。
侑弥くんが私にお礼を言うなんて、珍しい…。
なんて思って振り返ってみると、笑っている侑弥くんに、私も笑みがこぼれた。
「マズいクッキー、ありがとな!上達しろよ」
憎まれ口を叩く侑弥くんに、私は小さく頷いて、クソまずいクッキーを彰弥くんの元へと持っていった。
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