*+。知らない感情。+*

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このお兄さんの格好からして、間違いなく執事さんだろう。 スラッと背筋がいい立ち方は明らかに今まで保って生きていたからだ。 執事さんなのに、なんか不親切な人だ…。 真由奈さんが居てくれたらなぁ。話しやすいのに。 「…お兄さん、ここで働いてる方なんですよね?私、久しぶりに来たから分からなくて、出来ればもっと丁寧に適切に教えて欲しいです」 ちょっとお兄さんを睨みながら言うと、お兄さんは「…分かりました」と、何とも読み取れない表情で応えた。 そして、お兄さんはスタスタと歩き出す。 「あ、ありがとうございます」 お礼を言って後に着いていくと、前からタタタッと小走りな音が聞こえた。 「蓮華様ー!!」 あー!この声は、可愛い真由奈さんの声だ! 「はーい!」 大きな声で返事をすると、真由奈さんが徐々に見えてきて、お兄さんと私の前で止まった。 「あっ!碓氷(うすい)さん!」 真由奈さんがお兄さんを見てそう言う。 碓氷さんって言うのか! 「ああ、貴方のお知り合いでしたか?丁度良かった。お客様を彰弥様のお部屋にご案内して頂けませんか?」 碓氷さんが真由奈さんにそう言うと、真由奈さんは柔らかく笑い、「ええ、後は任せて下さい」と言ってくれた。 これで安心だ! 真由奈さんに会えたことにホッと安心すると、碓氷さんはスタスタと何処かに行ってしまった。 「あ!碓氷さん…ですよね?ありがとうございました」 「別に…何もしてませんけど」 碓氷さんは無表情でそう言う。 冷たい瞳に、ブルッと身体が震えた。  
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