*+。知らない感情。+*

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「真由奈さん、来てくれて良かったです。ありがとうございます」 あの人と2人っきりだったら、私泣いてたかもしれない。 「ふふ、とんでもないです。 では行きましょうか」 真由奈さんが私の手を握って、歩き出す。 その優しい勢いにひかれながら、私も後を歩いた。 「碓氷さんって、クールな方ですね」 さっきのあの瞳を思い出しただけで、寒くなる。 怖そうな人だった。 「そうですね。少し怖そうに見える人ですが、怒ってる姿も私は見たことがないので、無口な方ってだけだと思いますよ」 そうか、侑弥くんと性格が正反対ってだけなんだ。 「…じゃあ別に怖い人じゃないんですね。ごめんなさい、碓氷さん」 もう別のところで違う作業をしているであろう碓氷さんに謝った。 「もう居ませんよ。蓮華様ったら、面白い」 真由奈さんは、そんな私を見てクスクスと笑った。 「なんか謝らないと気が済まないんですよね…居ないことは分かっててもそうしちゃうんです」 「本当に良い人なんですね、蓮華様は」 「え?なんて?」 真由奈さんがボソッと何か言った。 あまりにも小さい言葉で聞き取れなかったけど……。 「いいえ、何でもありません。 あ、彰弥様のお部屋に着きましたよ」 真由奈さんは笑顔で、一つの扉を示す。 「あ、はい。 ありがとうございました。真由奈さんも仕事があるのに」 「気にしないで下さい。自分の仕事が終わって、一段落着いたところでしたので。 では、私は戻りますね」 真由奈さんは最後まで私に笑顔で、去っていった。  
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