2795人が本棚に入れています
本棚に追加
「何を言ってるんです?先程いいって言ったじゃないですか。それで伝わるんならいいって」
「言ったけども!
そんなハードルが高いこと出来ないよ!もっと…こう…自然に出来ることがいいなぁ」
自分から言ったくせに、注文つけるのは申し訳ないけど、絶対に出来ない。
私は頑なに首を振った。
「…ふぅ」
そんな私を見て、彰弥くんが浅く溜め息を吐いた音が聞こえた。
ど、どうしよう。彰弥くんに嫌な思いをさせている私が、何をするのか選ぶ権限なんてないんじゃないか…?
って、考える前から分かりきってるでしょ。私に選ぶ権限はないよ。
こうなったら、覚悟を決めて……っ。
いや、でもちょっと怖い…というか緊張しすぎて、絶対何かやらかしそう。
でも、やるって決めないと…!
「し、彰弥くん…!」
意を決して彰弥くんに顔を近付けようとした。
「仕方ないですね。キスが駄目でしたら、こちらだったらいいって言ってくれますか?」
彰弥くんがパッと私の目の前に何か紙を出した。
「…?
これは…?」
彰弥くんが持っている紙に書かれていることを読もうと、顔を更に近付けると、紙はすぐに遠ざけられる。
「いいって言ってくれたら、見せてさしあげます」
彰弥くんは、嫌なくらいいつもの爽やかな笑みだった。
最初のコメントを投稿しよう!